アメリカンフットボールでは、1つのプレーに11人の選手が同時に関わる。この11人が、コーチの意図した通りにそれぞれ異なる役割を果たして初めて、プレーは成功する。逆に11人の動きがバラバラになれば、どれほど優れた作戦でも失敗に終わる。この「バラバラにならないための約束事」を体系的にまとめたものが、プレーブックである。

プレーブックの目的 ― なぜ約束事が必要なのか

プレー成功の条件 ― 11人が共通言語を持つ

「プレーの成功」という目的を達成するには、11人の選手全員が共通の認識を持った上で、それぞれ異なる役割を、コーチの意図通りに遂行する必要がある。誰か1人でも解釈がずれれば、ブロックすべき相手を見失ったり、守るべきエリアを間違えたりして、プレー全体が崩れてしまう。

プレーブック ― 11人を動かす共通言語

プレーブックは、こうした食い違いが起きないよう、チーム全員があらかじめ共有しておくべき約束事を体系立ててまとめたものである。

なお、オフェンスとディフェンスでは求められる役割が大きく異なるため、実際のプレーブックはオフェンス用・ディフェンス用に分けて用意されるのが一般的である。以下では、両方に共通する約束事と、それぞれに固有の約束事をあわせて整理する。

プレーブックがまとめる3つの共通認識

プレーの成功に必要な約束事は、大きく「編成」「役割」「動き」の3つに分類できる。

どのような編成で臨むか

まず必要なのは、11人がどのような陣形で並ぶかという「編成」の共通認識である。具体的には、次の要素がある。

要素区分概要
フォーメーション共通オフェンス・ディフェンスともに、スナップ前の全体の並び方を表す型。
アライメント共通フォーメーションという型の中で、1人の選手が具体的にどこに立つかという細かな位置取り。
パーソネル共通フィールドに送り出す11人を、どのポジションの組み合わせで構成するか。
ストロングサイド・ウィークサイド共通フォーメーションによって生まれる、フィールド左右の選手密度の偏り。

誰が何の役割を担うか

配置が決まったら、次に必要なのはその中で誰が何をするかという「役割」の共通認識である。具体的には、次の要素がある。

要素区分概要
アサイメント共通各選手に割り当てられた具体的な任務。ブロックする相手、走るコース、守るエリアなど、11人それぞれに異なる内容が与えられる。
マッチアップ共通アサイメントを担う自チームの選手が、相手チームの誰と対峙するかという組み合わせ。有利・不利が、プレーの成否を大きく左右する。
プロテクションオフェンスオフェンスラインを中心とした、ブロックの割り当て方式。
カバレッジディフェンスディフェンス側の、選手やエリアの守備割り当て方式。

どのように動くか

配置と役割が決まったら、最後はその通りに選手たちがどう動くかという「動き」の共通認識である。具体的には、次の要素がある。

要素区分概要
プレーサイド・バックサイド共通オフェンスがプレーを仕掛ける側をプレーサイド、逆側をバックサイドと呼ぶ。ディフェンスも、このプレーサイドとバックサイドの見極めを踏まえて動く。
コンセプト共通11人分のアサイメントを組み合わせた、一連の動きの設計図全体。プレーブックには、名称のついたコンセプトが何百と収録されている。
ルートオフェンスレシーバーが走るコースの軌跡。
プレスナップモーションオフェンススナップ前に選手が横方向・後方向へ動くこと。
ディスガイズディフェンススナップ前に、実際とは異なるカバレッジやブリッツの構えを見せ、オフェンスの読みを狂わせること。
ブリッツディフェンス通常より多い人数でパスラッシュを仕掛け、オフェンスのプロテクションを上回って攻め込むこと。
観戦のヒント: 試合中継でアナウンサーが「シングルバック、トリップス・ライト」のようにフォーメーションを読み上げることがある。そこにストロングサイドとウィークサイドの情報が含まれていると分かると、次にどちら側にプレーが展開されやすいか予測しながら観戦できるようになる。
背景・トレンド: ここで紹介した用語は説明のための一般的なものだが、実際のプレーブックの用語はチームごとに大きく異なる。同じ「ウィークサイドのラインバッカー」を指すポジションでも、あるチームは「Will」、別のチームは「Wall」「Whip」と呼ぶなど、各チームが独自の呼称体系を持っている。プレーブックは戦術書であると同時に、そのチームだけに通じる一種の専門言語でもある。

まとめ

プレーブックは、フォーメーションやアライメント、ストロングサイドとウィークサイドといった編成の共通認識、アサイメントやマッチアップ、プロテクションやカバレッジといった役割の共通認識、そしてコンセプトやルート、プレスナップモーション、プレーサイドとバックサイドの見極め、ディスガイズやブリッツまで含む動きの共通認識を、オフェンス・ディフェンスの両方について体系立ててまとめたものである。11人が同じ約束事を共有しているからこそ、コーチの意図通りにチーム全体が連動し、プレーの成功(またはその阻止)に近づくことができる。

もっと詳しく

ここで紹介したプレーブックの各要素の具体的な内容は、以下のページで解説している。