2025年シーズン、4thダウンでもっともギャンブルを選んだのはカロライナ・パンサーズの32.2%、もっとも選ばなかったのはシアトル・シーホークスの11.3%だった。その差は3倍近い。だが、この数字の高さがそのままチームの巧拙を表しているわけではない。積極性の中身を見ていくと、まったく性質の違う2種類の4thダウンが混ざっていることが分かる。

実例1:積極性が結果に結びついているチーム

もっとも分かりやすいのがカンザスシティ・チーフスだ。2025年、4thダウンの26.0%で攻撃を選び、その成功率は75.0%。リーグ平均を大きく上回る頻度で行きながら、4回に3回は取り切っている。ニューイングランド・ペイトリオッツも24.5%で行って72.0%を成功させており、同じ型と言える。

この2チームに共通するのは、行く場面を選んでいることだ。前編で見たとおり、4thダウンで行くかどうかを決めるのは成功率だけではなく、蹴ったときに何が手に入るかである。敵陣に入っていてパントの見返りが小さく、しかも残りヤードが短い ―― この条件が揃った場面に絞って手を出せば、頻度も成功率も同時に高くなる。

もっとも積極的だったパンサーズも、32.2%で行って69.2%を成功させており、この型に近い。行く回数が多いこと自体は、成功率を下げる理由にならない。

実例2:積極的なのに届かないチーム

同じく積極的な部類でも、性質がまったく違うのがニューヨーク・ジャイアンツとニューヨーク・ジェッツである。ジャイアンツは31.5%で行って成功率46.2%、ジェッツは29.5%で行って43.9%。頻度はリーグ上位なのに、半分も取れていない。

ここにあるのは、選んだ積極性ではなく、選ばされた積極性だ。点差で追いかけている側は、パントしてしまえば攻撃権が戻ってこないかもしれない。時間が足りなければ、フィールドゴールで3点を取っても追いつけない。つまり、パントもフィールドゴールも選択肢から外れて、4thダウンで行くしかなくなる。この場合、残りヤードもフィールドポジションも選べない。不利な条件の4thダウンが積み上がるので、成功率は当然下がる。

だから、チーム別のゴーフォーイット率の順位表は、そのまま「判断の良し悪しの順位表」にはならない。積極性の数字を読むときは、成功率と必ずセットで見る必要がある。

成功率50% 40% 60% 80% 4thダウンでの攻撃選択率 10% 20% 30% チーフス ペイトリオッツ パンサーズ ジャイアンツ ジェッツ シーホークス 同じ「積極的」でも、上と下に割れる
図: 2025年シーズンの4thダウンでの攻撃選択率と成功率。右上は条件の揃った場面を選んで行っているチーム、右下は点差で行かざるを得なかったチーム。頻度だけでは判断の質は測れない。

4回ある前提が、3rdダウンのプレーコールを変える

積極化は、4thダウンという1つのダウンの中では完結しない。4thダウンで行くと決めているチームは、4thダウンだけを変えているのではない。1st・2nd・3rdの使い方そのものが変わる。

フィールドゴールの射程よりは遠く、かといってパントの見返りも小さい帯は、海外では「4ダウンテリトリー(four-down territory)」と呼ばれる。ここでは最初から4回使える前提でプレーを組める。ファーストダウンで必要ヤードの半分ほどを狙う標準的なプレーを置き、セカンドダウンでエンドゾーンへのショットを撃ち、サードダウンで残りを詰め、4thダウンでは3rdダウン用のプレーブックから選ぶ ―― という設計である。3回しか使えない前提なら、3回とも「確実にヤードを取る」ために使わざるを得ない。4回あれば、そのうち1回を大きく狙うために使える。

この変化は、受け手側の選手からも見えている。ライオンズのQBジャレッド・ゴフは、マニングキャストで「4ダウンあるときは、だいたい分かる。プレーコールから読み取れることもある。3rd&7で短いプレーがコールされたら、『ああ、4thで行くんだな』と思う」と語っている。

3rd&7で7ヤードを狙わず、あえて短いプレーで5ヤードだけ取りにいく。残り2ヤードを4thダウンで取る、という設計である。3回で7ヤードを取る問題が、4回で7ヤードを取る問題に変わっている。4thダウンの積極性は、3rdダウンのプレーコールの選択肢を広げるという形で、プレーの質そのものに跳ね返る。

そして、ディフェンス側もこの読みを共有している。ゴフは同じ場面で、守備が短いプレーを警戒して寄せてくるからこそ、逆に深いパスが通ることがあるとも指摘している。

3回しか使えない前提 1st 確実に取る 2nd 確実に取る 3rd 確実に取る → 4回使える前提(4ダウンテリトリー) 1st 半分取る 2nd ショット 3rd 残りを詰める 4th 取り切る 1回を大きく狙うために使える 同じ10ヤードを、3回で取る問題から4回で取る問題に変える
図: 4回使える前提だと、3回のうち1回をエンドゾーンへのショットに充てられる。4thダウンの積極性は、それ以前のダウンのプレーコールを変える。

守備側の対応 ― 「次がある」相手をどう守るか

この設計が成立するなら、守る側も3rdダウンの守り方を変えなければならない。

迫られるのは難しい二択だ。3rd&7で短いプレーを警戒して前に詰めれば、いま見たとおり背後が空く。かといって深さを守れば、目の前の5ヤードは簡単に渡してしまい、4thダウンを残り2ヤードにしてしまう。

つまり積極化は、4thダウンという1つのダウンの話にとどまらず、3rdダウンの攻防そのものを組み替えている。「サードダウンはパスの場面」という前提が崩れ、残りヤードと守備の構えを見て攻撃側が使い分ける場面になった。

今後の展望

この10年で、4th&1での攻撃選択率は42.9%から76.3%へとほぼ倍になった。注目すべきは、それだけ試行が増えても成功率が崩れていないことだ。4th&1の成功率は、2015年の65.6%から2025年の65.8%まで、この間ずっと60%台後半から70%台前半の帯にとどまっている。

これは、積極化が「行くべきでない場面にまで手を出した結果」ではなかったことを示している。もともと行けたはずの場面が、行かれずに残っていただけだ。だからこそ試行が倍になっても、取れる確率はほとんど変わらなかった。

一方で、この動きが一直線ではないことも前編で見たとおりである。2021年にいったん20.9%まで進んだ攻撃選択率は、2022年に18.8%まで後退し、2023年・2024年と足踏みしたあとに2025年の23.3%へ跳ねた。境界線はまだ動いている最中だ。残っているのは、自陣側でどこまで行けるのか、点差と残り時間をどう織り込むのか、という一段難しい問題である。守備側の対応が進めば、その線はまた引き直されることになる。

観戦のヒント: 4thダウンで行く気があるかは、4thダウンそのものではなく3rdダウンのプレーコールに出る。3rd&7で明らかに届かない短いプレーが呼ばれたら、残りを4thで取る設計だ。敵陣30ヤード台でテンポよく進めているときも、最初から4回使うつもりだと見てよい。
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ヘッドコーチがリスクとリターンをどう天秤にかけるか、プレーコールがどう選ばれるかは、以下の基礎知識で解説している。