2015年シーズン、NFLのチームが4thダウンでパントもフィールドゴールも選ばず、ギャンブルに出た割合は12.4%だった。2025年、その数字は23.3%まで上がっている。残り1ヤードの4th&1に限れば、42.9%から76.3%へ。10年前は「半分以下しか行かない」場面が、いまでは「ほとんど行く」場面に変わった。なぜNFLは、4回目の攻撃に手を出すようになったのだろうか。
数字で見る積極化
まず流れを確認しておきたい。4thダウンで攻撃を選んだ割合は、2015年から2017年までは12%台で動かなかった。動き始めたのは2018年で、そこから2021年の20.9%まで一気に伸びる。その後2022年に18.8%まで下がり、2023年19.6%、2024年20.0%と足踏みしたあと、2025年に23.3%まで跳ねた。上昇は一直線ではなく、一度立ち止まってからもう一段上がっている。
変化がはっきり出るのは、残り1ヤードの場面だ。4th&1での攻撃選択率は、2017年までの43%前後から2021年に69.7%、2025年には76.3%に達した。4回に3回以上は蹴らずに行くという水準である。ここでの成功率は、この10年を通して60%台後半から70%台前半の帯にとどまっており、試行がほぼ倍になっても崩れていない。数字は、nflverseが公開しているPlay-by-Playデータをもとに独自に算出した(レギュラーシーズンのみ。4thダウンのパス・ラン・パント・フィールドゴールを母数とし、パスとランを「攻撃を選んだ」とみなした)。
積極化の土台 ― パントの見返りは、敵陣では消える
4thダウンの選択を決めているのは、成功率よりもまず「蹴ったときに何が手に入るか」である。そしてパントの見返りは、フィールド上のどこにいるかで大きく変わる。
具体的に計算してみるとわかりやすい。敵陣35ヤードからパントして、そのままエンドゾーンに入ればタッチバックとなり、相手は自陣20ヤードから攻撃を始める。一方、同じ地点で4thダウンに失敗すれば、相手は自陣35ヤードから始める。パントで押し戻せるのは、わずか15ヤードということになる。失敗のリスクを取らずに手に入るのが15ヤードなら、成功すれば新たな4回の攻撃権が手に入るほうに賭ける理由は十分にある。
自陣深くではこれが逆転する。自陣20ヤードからのパントなら、相手の攻撃開始位置を40ヤード以上押し戻せる。ここで失敗すれば相手は即座に得点圏だ。つまりパントの価値は、フィールドを進むにつれてなだらかに下がるのではなく、敵陣に入った途端に急落する。この非線形性が、積極化の土台になっている。
理由1:フィールドゴールの射程が伸びた
変化の1つ目は、パントを上から押し下げる力である。
キッカーの飛距離と精度が上がり、以前なら届かなかった距離からもフィールドゴールが現実的な選択肢になった。試投の平均距離は2015年の38.2ヤードから2025年には40.5ヤードまで伸びている。50ヤード以上の試投は160本から266本へ増え、全試投に占める割合も16.2%から24.4%に上がった。しかも成功率は落ちていない。50ヤード以上の成功率は65.0%から68.8%に上がっており、成功した最長距離も61ヤードから68ヤードに伸びた。
これは「まだフィールドゴールには遠いからパント」とされる帯が、敵陣側から削られていくということだ。反対側からは、さきほど見たパントの見返りの低下が迫ってくる。上下から挟まれて、パントが正しい場所は狭くなった。
実際、パントの本数はこの10年ではっきり減っている。2015年のレギュラーシーズンで2440本だったパントは、2025年には1933本まで減った。積極化とは、パントが常に間違いになったという話ではない。パントが正しい場所が狭くなった、という話である。
理由2:アナリティクスが、その構造を数字にした
変化の2つ目は、判断する側の道具である。
敵陣でのパントの見返りが小さいことは、構造としては昔からそこにあった。だが試合中のコーチが、目の前の1回の4thダウンについて、蹴るのと行くのとでどちらが得かを数字で確かめる手段は、長いあいだ無かった。
2021年、NFLはNext Gen Stats Decision Guideを導入した。機械学習モデルが、4thダウンと2点コンバージョンについて、選択ごとの勝率と成功確率をプレー前に算出する。球団側でも、フィールドポジションと残りヤードから推奨を出すアナリティクス部門を持つのが当たり前になった。
つまりアナリティクスは、新しい戦術を発明したのではない。もともとあった構造を、試合中に使える数字に変えた。攻撃選択率の上昇が2018年から始まり、2021年に一段上がっているのは、この道具が広がった時期と重なっている。