2025年11月2日、ジャクソンビル・ジャガーズのキャム・リトルが68ヤードのフィールドゴール(FG)を決めた。2021年にジャスティン・タッカーが記録した66ヤードを更新するNFL新記録である。ただし、本当に変わったのは記録の数字ではない。1999年のNFLでは、55ヤード以上のFGは1シーズンに10本しか蹴られず、成功したのはそのうち1本だけだった。2025年、同じ距離の試投は114本に増え、73本が成功している。なぜ遠いFGは、これほど当たり前になったのだろうか。

数字で見る常態化

まず規模を押さえておきたい。50ヤード以上の試投は、1試合あたり1999年の0.34本から2025年には1.00本になった。55ヤード以上はもっと急で、0.04本から0.43本へと10倍以上に増えている。2021年からレギュラーシーズンが18週になったため、ここでは総本数ではなく1試合あたりに直した。数字は、nflverseが公開しているPlay-by-Playデータをもとに独自に算出している(レギュラーシーズンのみ)。

目を引くのは、増えたのが距離だけだという点だ。FGの試投そのものは、この27年間ずっと1試合あたり3.5本から4.1本の帯に収まっている。チームはFGを以前より多く蹴るようになったのではない。同じ回数だけ蹴りながら、蹴る距離を伸ばした。

両端を見るとさらにはっきりする。60ヤードを超えるFGの成功は、1999年から2009年までの11シーズンを合わせて3本しかなかった。2025年は、1シーズンだけで12本ある。

0.3 0.6 0.9 1.2 0.0 0.34 1.00 0.04 0.43 1999 2005 2011 2018 2025 50ヤード以上(1試合あたり) 55ヤード以上(1試合あたり)
図: 1試合あたりのFG試投数。50ヤード以上は1999年の0.34本から2025年の1.00本へ、55ヤード以上は0.04本から0.43本へ。18週制になった2021年以降と比べられるよう、本数ではなく1試合あたりに直している。

理由1:蹴る側が専門職になった

変化の1つ目は、蹴る選手そのものである。

元バッカニアーズのキッカーで、現在はキッキングコーチを務めるマイケル・ハステッドは、1990年代初頭にはキッキングコーチにつく選手がほとんどいなかったと振り返る。手本になる映像を自分で探し、成功しているキッカーに共通する動きを自力で抜き出すしかなかった時代である。

いまは専門のコーチがつき、大学のサッカー部からの転向組を含めて、身体能力の高い選手がキッカーという職を選ぶようになった。カウボーイズのブランドン・オーブリーは、理由を「コーチングが良くなった。この仕事に払われる金額も上がった」と説明している。

この見方は、データの形とも合う。伸びたのは遠い距離だけではないからだ。1999年から2003年と2021年から2025年を比べると、30ヤード台前半の成功率は84.9%から96.4%へ、45ヤード台後半は60.1%から76.4%へ、50ヤード台前半は55.7%から73.4%へ上がっている。55ヤードから59ヤードに至っては25.0%から62.7%だ。

かつては4本に1本しか入らなかった距離が、いまは3本に2本近く入る。特定の距離だけが伸びたのではなく全レンジが底上げされているのは、狙い撃ちの工夫ではなく、蹴るという技術そのものが上がったことを示している。

25% 50% 75% 100% 84.9 96.4 30-34 70.9 83.2 40-44 60.1 76.4 45-49 55.7 73.4 50-54 25.0 62.7 55-59 距離帯の単位はヤード 1999-2003 2021-2025
図: 距離帯ごとのFG成功率。1999-2003年と2021-2025年の比較。遠い距離だけでなく、30ヤード台前半も含めて全レンジが上がっている。

理由2:蹴らせる側が確信を持った

変化の2つ目は、蹴らせるかどうかを決める側にある。

キッキングコーチのダン・オーナーは、転機をこう説明する。「10年前だって、選手は練習で60ヤードを決めていた。コーチのほうが確信を持てなかっただけだ」。できることと、試合でやらせることのあいだには距離がある。その距離を縮めたのはキッカーの進歩そのものではなく、ヘッドコーチ側の見積もりが更新されたことだった。

それはフィールドの使い方に表れている。以前ならパントを選んでいた位置から蹴るようになった、ということでもある。4thダウンでFGを試投した位置を見ると、1999年から2003年には95%が相手ゴールまで33ヤード以内からだった。2021年から2025年では、これが37ヤードまで下がっている。中央値も18ヤードから21ヤードへ動いた。FGを狙い始める境界は、この四半世紀で自陣側へおよそ4ヤード動いたことになる。

同じ時期に4thダウンで攻撃を選ぶ割合も上がっているが、これは別々に起きた話ではない。FGの届く範囲が広がれば、パントが正しい場所はその分だけ狭くなる。

理由3:ボールの扱いが変わった

変化の3つ目は、ここ1年の話である。

2025年、NFLは各クラブが試合前日までにキッキング用のボールを準備することを認めた。レイブンズ・ブラウンズ・テキサンズ・レイダーズ・バイキングス・イーグルス・コマンダーズの7球団が共同で提出した決議G-2による。それまでは試合当日の60分間でタオルとブラシを使って仕上げるしかなく、キッカーが本番のボールに触れるのは直前という状態だった。

いまは60球が各クラブに渡され、1球あたり3試合まで使える。週を通して練習で使ったボールが、そのまま試合に出てくる。

キッカーたちは、十分になじんだボールは飛距離を3ヤードから4ヤード伸ばすと見ている。イーグルスのディフェンシブコーディネーター、ビック・ファンジオは「アスタリスクが要るくらいだ」と、野球のステロイド時代になぞらえた。

ただし、これを常態化の原因と呼ぶと順序が逆になる。1試合あたりの50ヤード以上の試投は、2025年より3年前の2022年の時点ですでに0.83本まで来ていた。ボールの扱いが変わったのは、長く続いてきた流れの上に乗った最後の一押しである。

背景・トレンド: 「ドームが増えたから」という説明は、データでは支持されない。屋外の試合だけに絞っても、50ヤード以上が全試投に占める割合は1999-2003年の8.1%から2021-2025年には20.3%へ、その成功率は51.0%から66.7%へ上がっている。屋内でも屋外でも、同じように遠くなっている。後編では、常態化を体現している実例と、この変化がフィールドの使い方をどう変えたかを見ていく。
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フィールドゴールの仕組みと、キックまでの役割分担は、以下の基礎知識で解説している。