フィールドゴール(FG)の射程が伸びたという変化は、リーグ全体の平均値としてだけでなく、特定の選手の形で目に見える。そしてそれは、フィールドのどこで何を考えるかという、攻守双方の間合いを動かし始めている。後編では常態化の実例から入り、フィールドの使い方とルールの側で始まった議論までを見ていく。

実例1:オーブリー ― 50ヤード超を17本

ダラス・カウボーイズのブランドン・オーブリーは、2025年シーズンに50ヤード以上を17本試投した。リーグで最も多い。成功は11本で、成功率は64.7%にとどまるが、そもそもこの距離を17回も任されること自体が以前なら起こらなかった。全体では42本中36本を決めている。

特徴的なのは60ヤード台である。オーブリーはこのシーズンだけで61ヤード・63ヤード・64ヤードの3本を成功させた。1人のキッカーが1シーズンに決めた60ヤード超の本数としては、リーグ全体で12本しかなかったうちの4分の1を占める。彼が68ヤードを試投して外した場面もあり、チームが持っている射程の見積もりは、成功した64ヤードよりさらに先にある。

実例2:キャム・リトルの68ヤード

ジャクソンビル・ジャガーズのキャム・リトルは、2025年11月2日のレイダーズ戦で前半終了間際に68ヤードを決めた。2021年にジャスティン・タッカーが決めた66ヤードを2ヤード更新する、NFLの新記録である。

この1本は屋内での記録だが、リトルは同じシーズンの第18週、本拠地ジャクソンビルの屋外で67ヤードも決めている。こちらは屋外での最長記録にあたる。記録を2回に分けて塗り替えたことが、いま起きていることの性質をよく表している。条件に恵まれた1本ではなく、同じ選手が屋内でも屋外でも60ヤード台後半を射程に入れているということである。

フィールドの使い方が変わった

射程が伸びて困るのは、守る側である。ビック・ファンジオは「ダラスの選手は今季70ヤード超を決めるだろう。バッカニアーズが65ヤードを決めるなんて誰が思ったか。キッキングゲームとFGを劇的に変えてしまった」と語っている。彼が挙げた2本は、いずれも2025年に実際に起きたことだ。

変化は境界線の移動として数字に出る。4thダウンでFGを試投した位置の95%点は、1999年から2003年の33ヤードから、2021年から2025年には37ヤードまで広がった。守備から見れば、相手を止めなければならない線が自陣側に4ヤード動いたということである。前半終了間際や試合終盤に、どこまで下がらせれば蹴られずに済むかという計算が、その分だけ厳しくなる。

攻撃側から見れば、同じ4ヤードが余裕になる。残り時間が少ない場面で、あと何ヤード進めば得点の可能性が生まれるかという目標が手前に来るからだ。2分ドリルの設計そのものが、この4ヤードだけ楽になっている。

2021-2025 の 95% 1999-2003 の 95% 10 20 30 40 50 自陣側 敵陣ゴール 相手ゴールまでの距離(ヤード) 4yd 境界が自陣側へ動いた分
図: 4thダウンでFGを試投した位置の95%点。1999-2003年は相手ゴールまで33ヤード以内が95%を占めたが、2021-2025年では37ヤードまで広がった。

ルールの側で始まった議論

キッカーが上手くなりすぎたのではないか、という議論はすでに始まっている。もっとも具体的なのは、ゴールポストの幅を現行の18フィート6インチから14フィートへ狭める案で、2015年のプロボウルで一度試されている。2024年シーズンのあと競技委員会が検討するとされたが、いまのところ規則の変更には至っていない。

当事者の反応は冷ややかだ。元キッカーで現在はコンサルタントを務めるニック・ノバクは「ゴールポストを狭めたところで選手は適応して、同じくらい正確になるだろう」としたうえで、「選手は本当に上手いのだから、それを罰するべきではない」と述べている。チャージャーズのスペシャルチームコーディネーター、ライアン・フィッケンの言い方はもっと直接的で、「クォーターバックがたくさん投げているからといって、ボールを重くするのか」と反問している。

この議論が難しいのは、キッカーの進歩と、ボールの扱いという規則の変更とが同じ時期に重なっていることである。ファンジオが「アスタリスクが要る」と言うのは後者を指しているが、前者は四半世紀かけて積み上がってきたもので、規則を戻しても消えない。

今後の展望

2026年シーズンも流れは続いている。第1週から第4週までで比べると、1試合あたりの55ヤード以上の試投は2025年の同期間の0.57本から0.61本へ、試投の平均距離は41.5ヤードから41.6ヤードへ。50ヤード以上は1.20本でほぼ横ばいだが、より遠い帯だけがまだ伸びている。

この27年を通して動かなかったのは、FGを蹴る回数だった。1試合あたり3.5本から4.1本の帯から出ていない。得点の機会そのものが増えたわけではなく、その機会が成立する範囲だけが広がったということである。守る側にとっては、止めるべき線が毎年少しずつ後ろに下がっていく。

観戦のヒント: 試合終盤、自陣で攻撃権を得たチームが何ヤード進もうとしているかを見てほしい。かつては相手陣30ヤード付近まで入らないと蹴れなかったが、いまは相手陣40ヤード手前で十分に射程に入る。残り時間とタイムアウトの使い方も、その目標地点に合わせて組み立てられている。守備側が「あと1回止めれば終わり」ではなく「あと10ヤード押し戻さないと終わらない」ように動いていたら、それは射程を計算している証拠である。
もっと詳しく

残り時間とフィールドポジションから何を選ぶかは、以下の基礎知識で解説している。