「実戦プレー解説」は、実際の試合の1プレーを取り上げ、「何が起きたか」「なぜ機能したか」を解き明かす連載コンテンツ。今回取り上げるのは、2025年シーズンWeek 7、ロサンゼルス・ラムズ対ジャクソンビル・ジャガーズ戦で見られた1プレーだ。近年台頭してきた13パーソネルというオフェンス編成が、実際の試合の中でどう機能するかを、フォーメーションから結果まで追って解説する。

プレーの背景

2025年10月19日、ロンドンのウェンブリー・スタジアムで行われたこの試合、ラムズはすでにジャガーズを圧倒しており、第4Qには28-0までリードを広げていた。残り11:11、ジャクソンビル陣31ヤード、4th&1。パントで済ませてもおかしくない場面だが、ラムズはここでもゴーフォーイットを選択する。

フォーメーションとセット

ラムズが並べたのは13パーソネル(RB1・TE3・WR1)。この試合、ラムズはすでに何度もこの編成を使っており、ジャガーズにとっては「見慣れた形」になっていた。ジャガーズのヘッドコーチ、リアム・コーエンはこれを「6-1フロント」、つまりボックスに6人を並べる、実質ゴールライン仕様の対ラン隊形で迎え撃つ。4th&1という距離と、これまでのラムズの傾向を踏まえれば、ごく自然な判断だった。

QB TE・TE・TE ジャガーズ「6-1フロント」(対ラン仕様)
13パーソネル(強サイドにTE3人)に対し、ジャガーズはボックスに6人を並べる対ラン仕様の6-1フロントで応じた。

プレーの狙い

ラムズが実際に選んだのは、ランではなくランフェイクからのプレーアクションだった。TE3人という編成そのものがすでに「ランの脅威」として機能しており、そこに4th&1という距離が重なることで、ジャガーズの守備は完全にランへの反応を優先する状態になっていた。ラムズはその反応そのものを利用する。RBへのハンドオフを見せかけ、TEテランス・ファーガソンには、急がず「我慢する」ポストルートを走らせた。

何が起きたか

ランフェイクに食いついたディフェンダーは、ファーガソン本人の言葉を借りれば「すでにパニックになっていた」。ラン警戒で寄っていた分、ポストへ切れ込むファーガソンについていけず、その背後にぽっかりと空間ができる。QB(クォーターバック)のスタッフォードからのパスをファーガソンが受けると、そのまま誰もいないエンドゾーンまで31ヤード。ファーガソン自身のキャリア初タッチダウンとなった。

31yd TD ランに食いついたDB
ランフェイクに食いついたディフェンダーの背後を、我慢して走ったポストルートが射抜く。

なぜ機能したか

このプレーの核心は、13パーソネルという編成そのものが「時間をかけて刷り込んだラン警戒」を、たった1プレーで裏切って見せた点にある。RBやWRを並べた通常編成と違い、TEを3人並べたセットは守備に強いランの予感を与える。その予感が、ダウン&ディスタンス(4th&1)と結びつくことで、守備は反射的にラン対応へ寄ってしまう。ラムズが利用したのは、まさにこの「編成が生む予断」だった。

そしてこのプレー、実はジャガーズにとって初めての経験ではなかった。ジャガーズHC(ヘッドコーチ)のリアム・コーエンは試合後、「これは前週にシアトル(AJ・バーナー)にやられたのと全く同じプレーだった」と認めている。同じ穴を、同じ手口で、2週連続で突かれた形だ。

まとめ

13パーソネルは、単に人員を入れ替えるだけの編成ではない。それが繰り返し使われ、守備に「ラン」という予断を刷り込んだ末に、その予断そのものを裏切るプレーアクションが機能する。数字の上でのトレンドが、実際の試合でどう牙を剥くかを示す好例だった。

観戦のヒント: 重い編成が出てきた場面は、その試合の中だけを見ていても半分しか分からない。ジャガーズがこの日突かれた穴は、前週にシアトルが開けたのと同じものだった。前の週に何でやられたかを覚えていると、同じ形が二度目に出てくる瞬間が分かる。
もっと詳しく

パーソネル(人員構成)の数え方の基本や、守備側のサブパッケージによる対応は、以下の基礎知識で解説している。