「実戦プレー解説」は、実際の試合の1プレーを取り上げ、「何が起きたか」「なぜ機能したか」を解き明かす連載コンテンツ。今回取り上げるのは、守備の1人に二択を迫る設計が、正しく答えさせたうえで残りを取った例だ。2018年1月14日のNFCディビジョナルプレーオフ、ミネソタ・バイキングス29-24ニューオーリンズ・セインツ。第4Q残り10秒の3rd&10で出た1プレーについて解説する。
プレーの背景
ミネアポリスのUSバンク・スタジアム、観衆66,612人。第4Q残り10秒、バイキングスは自陣39ヤードで3rd&10を迎えた。
24-23でセインツがリードしている。バイキングスにタイムアウトは残っていない。
ここで必要なのはタッチダウンではない。25ヤードほど進んでサイドラインの外へ出れば、キッカーがフィールドゴールを蹴れる。外に出られなければ、そこで時間が尽きる。つまりバイキングスが欲しかったのは、サイドライン際の1本だった。
ヘッドコーチのパット・シューマーがQB(クォーターバック)のケイス・キーナムに伝えたのは、とにかくボールを放り出せ、ということだった。
フォーメーションとセット
プレーコールは「バッファロー・ライト・セブンヘブン」。バッファローは右に3人のWR(ワイドレシーバー)を寄せたバンチの並びと、その保護の仕方を指す。セブンはコーナールートに振られた番号で、このプレーには深さの違うコーナールートがいくつも入っている。
右にステフォン・ディッグス、ジャリアス・ライト、カイル・ルドルフ。左にアダム・シーレンが立ち、同じ側にRB(ランニングバック)のジェリック・マッキノンが残る。
セインツはプリベントではなく、カバー2で構えた。深い守りを左右に1人ずつ置き、その前にCB(コーナーバック)2人とLB(ラインバッカー)3人を並べる形である。バンチ側の深い守りがルーキーのマーカス・ウィリアムズ、同じ側のコーナーバックがケン・クローリー。
中央に残ったラインバッカー3人のところへは、この並びでは誰も走ってこない。
プレーの狙い
このプレーは、全部のルートがサイドラインへ向かう。狙いは、その一帯を人数で溢れさせることだ。同じ側へ、深さを変えたルートを重ねて走らせ、守備に選ばせる。
肝になるのは、クローリーの受け持つ一帯へディッグスとライトの2人が入っていくことである。低い方と高い方を同時に見せ、クローリーが取らなかった方へ投げる。ハイ・ローと呼ばれる形だ。
カバー2では、低い方はコーナーバックが受け止め、高い方は後ろの深い守りが受け取る。つまりクローリーは低い方を取り、ディッグスをウィリアムズへ受け渡す。この設計は、その受け渡しの境目を狙っていた。
何が起きたか
クローリーは正しく答えた。ライトへ投げるならここ、という位置に座っている。
だからキーナムは、もう一方へ投げた。ディフェンスラインの上げた腕を越える、柔らかい球。ディッグスはニューオーリンズ35ヤード地点でこれを捕った。
後ろから詰めてきたウィリアムズは、ディッグスとサイドラインのあいだに入るのではなく、跳んだディッグスの下へ低く入っていった。接触はなく、勢いのまま味方のクローリーに当たる。
外へ出るはずだったディッグスは、足をついたまま走り出した。本人は、外れたのが見えた、その時点でもう走っていた、と振り返っている。35ヤード先のエンドゾーンまで、追いつく選手はいない。捕ってから35ヤード、合わせて61ヤードのタッチダウンで29-24。試合はこのプレーで終わった。
なぜ機能したか
このプレーを、守備のミスだけで説明することはできない。
ハイ・ローは、守備の1人に二択を迫る形である。どちらかを選べば、もう一方が空く。クローリーは正しい方を選んだ。正しく選んだからこそ、ボールは高い方へ行った。設計の側から見れば、ここまでは想定どおりである。
勝負は、その先の受け渡しにあった。カバー2で高い方を受け取るのは深い守りの役目で、このときの仕事は、相手とサイドラインのあいだに入ることだった。外へ追い出せば時間が尽きて試合が終わる。ウィリアムズが選んだのは、ボールを争うことでも外へ押し出すことでもなく、倒すことだった。
もうひとつ見落とせないのは、攻撃側が狙っていたのも同じサイドラインだったことである。攻撃は外へ出たい、守備は外へ出したい。この場面では、両軍の望みが同じ方を向いていた。だからこそ、外に出さずに内側で倒す、という選択が出てくる。その選択が外れたとき、ディッグスの前に残っていたのは、内にも外にも誰もいない空間だった。
中央のラインバッカー3人は、このプレーにまったく関わっていない。全部のルートを片側へ寄せるというのは、守備の11人のうち何人かを、はじめから計算の外へ置く作業でもある。11人で守っているように見えて、この一帯の勝負は3対2だった。
まとめ
サイドラインへ向かうルートを、深さを変えて重ねるのは、守備に「どれを捨てるか」を選ばせるための形だ。選ばせている以上、正しく選ばれることも織り込んである。織り込んだうえで、選ばれなかったほうを拾う。このプレーが最後に突いたのは、守備が間違えた場所ではなく、2人の守備のあいだで責任が渡される場所だった。ゾーンの受け渡しは、そこを通る受け手が最も速く走っている瞬間に起きる。
- NFL.com ― How Vikings pulled off the 'Minnesota Miracle' and broke a curse
- PurplePTSD ― Buffalo Right Seven Heaven: All You Need To Know
- ESPN ― Inside the 'Minneapolis Miracle': the play that saved the Vikings' season
- ESPN ― Marcus Williams says missed tackle vs. Vikings' Stefon Diggs was just my play to make
- Vikings.com ― 3 Stats That Stood Out: Vikings-Saints Divisional