2025年シーズン、NFLのディフェンスはランプレー1回あたり4.51ヤードを許した。1999年は3.99ヤードだった。1回で0.5ヤードの差は小さく見えるが、1チームは1試合で26回前後走られるので、1試合あたり13ヤードを余分に進まれている計算になる。しかもこれは、ランに限った話だ。パス1回あたりに許したヤードは、直近の8シーズンではむしろ減っている。なぜ、ランだけが止まらなくなったのだろうか。

数字で見る後退

ランを止める力は、27年かけて落ちている。

1回のランで許したヤードは、1999年から2001年の平均が4.04ヤード、2002年から2014年の13年間が4.31ヤード、2015年から2017年が4.28ヤードだった。これが2018年から2025年の8シーズンでは4.52ヤードになっている。4つの期間のなかで最も多い(集計はレギュラーシーズンのみ)。

マイナスにできた割合――ロスタックルの割合も、同じ向きだ。1999年から2001年は10.54%、2002年から2014年は9.46%、2015年から2017年は10.46%で、2018年以降は8.71%まで下がった。4つの期間のなかで最も低い。

注意したいのは、この落ち込みが特定の1シーズンに起きたわけではないことだ。ロスタックルの割合は、2018年から2025年の8シーズンのすべてが、2002年から2017年の平均9.65%を下回っている。1年だけの揺れではなく、水準そのものが移っている。

一方で、10ヤード以上のランを許した割合は2002年から2017年の11.16%から11.80%へとわずかに増えただけだ。大きく破られるようになったわけではない。

4.0 4.2 4.4 4.6 8.5% 9.5% 10.5% 左 ― 1回のランで許したヤード 右 ― ロスタックルの割合 3.99 4.51 10.7% 8.4% 1999 2012 2025
図: 1回のランで許したヤード(緑・左目盛り)と、ロスタックルの割合(オレンジ・右目盛り)の推移。2018年以降、2本が逆の向きへ離れていく。

落ちたのはランだけだった

この数字だけを見ると、攻撃全体が強くなった結果のようにも見える。実際、パスの完成率はこの27年で54.0%から60.2%まで上がっている。ところが1回あたりで測ると、様子が違う。

パスプレー1回あたりに許したヤードは――試投と、サックされたプレーを合わせて数えると――2015年から2017年が6.31ヤードで、これが27年で最も多い。2018年から2025年は6.22ヤードで、むしろ減っている。完成率は過去最高なのに、1回あたりで進まれるヤードは抑えられている。短いパスは通るようになったが、その先で止めている。

つまり守備は、全面的に押されているのではない。パスについては、この8年でむしろ良くなっている。落ちたのはランだけだ。

3.5 4.0 5.0 6.0 ラン パス 4.51 6.09 1999 2012 2025
図: ラン1回あたりとパス1回あたりに許したヤードの推移。パスは2015年から2017年を山にして下がっているのに対し、ランは2018年以降に27年で最も高い水準へ上がっている。

理由1:ボックスの人数ではなく、その後ろが変わった

まず押さえておきたいのは、守備がボックスに置く人数は変わっていないことだ。ボックス――オフェンスラインの正面、ランが最初に当たる区域――にいる守備側の人数は、2018年から2022年のあいだ平均6.0人で、ほとんど動いていない。人を抜いたから止まらなくなった、という説明は成り立たない。

変わったのは、その後ろにいる選手の位置だ。深い位置にセーフティを1人だけ残す形――シングルハイ――の割合は、2018年の63.1%から2022年には54.6%まで下がった。入れ替わるように、2人を深く残す形が30.1%から38.9%まで増えている。

2人を深く残すと、ランが来たときにボックスへ加わる選手が遠くなる。1人だけ深く残す形なら、もう1人のセーフティは最初からLOSの近くにいて、ランに対する7人目として数えられる。2人とも深い位置にいると、ランを見てから走り込むことになり、間に合うのはボールがボックスを抜けた後だ。同じ6人でも、後ろから足される人数が違う。

LOS 2人とも深く残す 1人が下りてくる DL DL DL DL LB LB S S ランには間に合わない DL DL DL DL LB LB S S 7人目として加わる
図: 同じ6人のボックスでも、セーフティを2人とも深く残す形と、1人が下りてくる形では、ランに加われる人数が変わる。

理由2:ラインバッカーが、ランを止めるために選ばれていない

もうひとつは、ボックスの中にいる選手そのものの変化だ。

PFF(プロフットボールフォーカス)は、ラインバッカーが以前より小さくなり、力で正面から止める作りではなくなったと指摘している。ラインバッカーを3人置く編成は2020年に守備スナップの約4分の1まで減り、PFFが15年分のデータを持つ中で最も低い割合になった。同じ2020年で最も多かった編成は、ラインバッカー2人のニッケルで59%を占める。

選び方も変わっている。2人を深く残す形では、内側のラインバッカーはタイトエンドのルートやスクリーンへの対応を負い、外側のラインバッカーはランニングバックをマンツーマンで見ることを求められる。この2つをこなせる選手を優先すれば、正面から押し返す体格は後回しになる。

パスラッシュを担う選手も軽くなっている。CBS Sportsは、250ポンドを下回るエッジラッシャーが増えたことを、オフェンスが重い編成で押し込めるようになった理由の1つに挙げている。

背景・トレンド: 攻撃側のラン比率は、2015年の40.2%から2025年の43.1%まで上がっている。ただし本編の数字はいずれも1プレーあたりで測っているので、走られた回数が増えたことの影響は受けない。1回のランで許すヤードそのものが増えている。後編では、2025年シーズンのチーム別の実例と、今後の攻防を見ていく。
もっと詳しく

ランを止める条件と、ディフェンスの選手配置の読み方は、以下の基礎知識で解説している。