前編では、プレーアクションパスの効果を裏付ける数字と、それでも長年使用率が伸びなかった理由を見てきた。後編では、実際にその使用率を動かしつつあるコーチの実例と、今も残る「伸びしろ」の実態を見ていく。

実例1:ベン・ジョンソンが持ち込んだ変化

2022年から2024年までデトロイト・ライオンズのオフェンスコーディネーターを務めたベン・ジョンソンは、2024年シーズン(11月時点)、ジャレッド・ゴフのパスの37.2%でプレーアクションを使い、全QB(クォーターバック)中トップだった。2025年、ジョンソンはシカゴ・ベアーズのヘッドコーチに就任。就任後、同チームのプレーアクション使用率は33.10%までリーグ2位に跳ね上がった。

5.0本/試合 2024年(17試合・計85本) 9.1本/試合 2025年(9試合時点・計82本)
図: ベアーズQBキャレブ・ウィリアムズのプレーアクションパス数は、2024年シーズン通算85本(17試合)に対し、2025年はわずか9試合時点で82本に達しており、試合あたりのペースはおよそ2倍に増えている。

象徴的なのが、ウィリアムズ自身の変化だ。2024年11月時点の調査では、ウィリアムズのプレーアクション使用率はわずか19%(全QB中29位)にとどまり、「苦戦している」と評されていた。同じQBが、コーチが変わっただけでこれだけ数字を伸ばした事実は、プレーアクションの使用率が選手の能力や好みではなく、コーチの方針によって大きく左右されることを裏付けている。

背景・トレンド: 2024年11月時点、ライオンズのゴフが全QB中トップの37.2%だった一方、当時のベアーズの主戦QBキャレブ・ウィリアムズは19%(29位)にとどまっていた。同じ年に対照的な数字を記録していた2人が、ジョンソンの転籍によって同じコーチの下に集まった格好になる。

実例2:それでも残る「伸びしろ」

2025年シーズンの数字を見ると、使用率の高いチームはロサンゼルス・ラムズ(34.40%)、シカゴ・ベアーズ(33.10%)、マイアミ・ドルフィンズ(31.80%)。一方、使用率の低いチームはシンシナティ・ベンガルズ(17.10%)、ニューヨーク・ジェッツ(20.40%)、ニューオーリンズ・セインツ(20.60%)。最も使うチームと最も使わないチームの差は17ポイント以上に達しており、リーグ全体の使用率が底上げされた今も、チーム間の差はむしろ大きいままだ。

プレーアクションの効果自体は、前編で見た通りすでに10年以上前から数字で示されている。それでもなおこれだけの差が残っているという事実は、効果を知っているかどうかではなく、それを実際の采配にどこまで反映させるかという、コーチごとの判断の差が大きいことを物語っている。

今後の展望

プレーアクションパスの効果は、10年以上前から数字で示され続けてきた。ジョンソンの事例が示すように、使用率を伸ばす余地は今もチームごとに大きく異なっている。この「伸びしろ」がどこまで埋まっていくのか、来シーズン以降の采配を追いかける新しい視点になるはずだ。

もっと詳しく

プレーアクションと、RPOなど他のフェイクを利用したプレーとの関係は、以下の基礎知識で解説している。