2025年シーズン、NFL全体のマンカバレッジ使用率はわずか22.6%にとどまった。7シーズン前には3割を超えていた数字が、ここまで落ち込んでいる。当時から既にゾーンが優勢だったが、その差はここまで拡大した。今やリーグ全体のカバレッジ配分は、ゾーンとマンでおよそ7対3。かつて「守備の花形」とも言われたマンツーマンは、なぜここまで数を減らし、ゾーンの優位がさらに拡大したのだろうか。

数字で見る潮流の変化

まずは数字で流れを確認しておきたい。7シーズン前、NFL全体のマンカバレッジ使用率は3割を超えていた。それが2025年シーズンの第17週終了時点では22.6%まで低下し、直近3シーズンだけを見ても32チーム中29チームがゾーンの使用率を増やしている。マンツーマンを最も多く使うクリーブランド・ブラウンズでさえ45.1%(ケビン・ステファンスキーHC)にとどまり、シーホークスやラムズ、チャージャーズ、パンサーズなどはさらにゾーン寄りの配分を敷いている。

33%+ 7シーズン前 22.6% 2025年
図: NFL全体のマンカバレッジ使用率は、7シーズン前の3割超から、2025年シーズン第17週終了時点の22.6%まで低下した。

理由1:ベースパッケージの増加とミスマッチ回避

ゾーンが選ばれる第一の理由は、ディフェンスのベースパッケージ比率の変化にある。ニッケルやダイムのようなDB(ディフェンスバック)中心の編成ではなく、ラインバッカーを多く並べるベースパッケージを使う場面が増えている。ところがLB(ラインバッカー)は、スピードのあるWR(ワイドレシーバー)やTE(タイトエンド)を1対1で追いかけるマンツーマンには不向きだ。個々の速さで振り切られるリスクを抱えたまま特定の選手に張り付かせるより、エリアを守らせてチーム全体でカバーするゾーンの方が、ミスマッチを表に出さずに済む。

LOS LB LB LB WR 速さで置き去りに
図: ベースパッケージでは、スピードのあるWRに対してLBが単独でマッチアップする場面が生まれやすい。ゾーンであれば、この1対1の弱点を表に出さずに済む。

理由2:オフェンスのスペーシング重視への対応

第二の理由は、オフェンス側の変化にある。近年のオフェンスは、選手のサイズやフィールド上のスペーシングを重視した設計を強めている。広いスペースに複数の脅威を同時に置かれると、マンツーマンで個々に追いかける守り方は、どこか一つでも剥がされれば即失点につながりやすい。ゾーンであれば、エリアごとに責任を分担しながら、構造としての安定性を保てる。ディフェンスは個人のマッチアップでの積極性より、崩れにくい枠組みを優先するようになったと言える。

理由3:プレスナップモーション対策

第三の理由は、以前の記事でも触れたプレスナップモーションの急増だ。2025年シーズンには、リーグ全体のプレーの63.9%でモーションが使われている。マンツーマンは、モーションで選手が動くたびに担当を受け渡す必要があり、その受け渡しの瞬間を狙われるとミスが生まれやすい。ゾーンであれば、担当エリアそのものは動かないため、モーションで人が入れ替わっても守備の骨格は崩れない。守備コーディネーターたちは、モーションへの耐性という観点からも、ゾーンを選びやすくなっている。

観戦のヒント: スナップ前、レシーバーがどれだけ動いても守備隊形の骨格がほとんど変わらなければ、それはゾーンが土台にあるサインだ。逆に、動いた選手に合わせてディフェンダーが列を組み替えるようであれば、マンツーマン的な要素が強い可能性が高い。
もっと詳しく

ゾーンカバレッジの基本的な仕組みや、実際に使われるカバレッジの体系は、以下の基礎知識・戦術まとめで解説している。