前編では、NFL全体でゾーンカバレッジがさらに拡大した3つの理由を見てきた。後編では、実際にゾーンを軸に設計されたディフェンスの実例と、そこに潜む落とし穴、そして今後の展望を見ていく。
実例1:ヒューストン・テキサンズ ― スプリットフィールドの使い分け
ゾーン重視の設計を象徴するのが、ヒューストン・テキサンズだ。同チームはニッケルパッケージをほぼ固定的に使いながら、フィールドを左右に二分し、それぞれ異なるゾーンカバレッジを同時に走らせる「スプリットフィールド」を採用している。早いダウンでは、片側をカバー3(40%)、もう片側をクォーターズ=カバー4(20%)に振り分ける組み合わせが多く使われる。
1つのコールで2種類のゾーンを同時に成立させることで、オフェンスは事前にどちらの守り方かを見極めて片側だけを狙い撃ちすることが難しくなる。
実例2:ミネソタ・バイキングス ― ブリッツとゾーンの共存
一見矛盾するように見える組み合わせを見せているのが、ケビン・オコネルHC(ヘッドコーチ)率いるミネソタ・バイキングスだ。オープンフィールドの状況でブリッツを仕掛ける割合は66%に達する一方、同じ場面でゾーンカバレッジに入る割合も80%に上る。積極的にプレッシャーをかけながら、後方の枠組みはあくまでゾーンで固めるという設計だ。
ゾーン偏重が抱える3つの落とし穴
ゾーンへの依存が強まるほど、その弱点も表面化しやすくなる。代表的な落とし穴は3つある。1つ目は、シングルハイのような静的な骨格に頼りすぎること。2つ目は、スプリットフィールドのような場面ごとの微調整を怠ること。3つ目は、LB(ラインバッカー)が横の動きばかりに気を取られ、ラン時のギャップ責任を放棄してしまうことだ。
今後の展望
ゾーンのさらなる拡大は、単なる流行ではなく、パーソネルとオフェンスの進化に対するディフェンス側の合理的な適応だ。とはいえゾーンにも落とし穴がある以上、この先も両者は互いの弱点を突き合いながら進化を続けていくはずだ。カバレッジの配分がどちらに振れているかを追いかけることは、これからの観戦の新しい視点になる。