前編では、NFL全体でベースパッケージの使用率が反発している背景を見た。後編では、この動きを実際に主導しているチームの実例と、ベース回帰が抱えるリスク、そして今後の展望を見ていく。

実例1:ディトロイト・ライオンズ ― 1stダウン82.3%

この動きを最も強く体現しているのがディトロイト・ライオンズだ。ダン・キャンベルHC(ヘッドコーチ)率いるディフェンスは、2025年シーズンの第17週終了時点で、1stダウンでのベースパッケージ使用率が82.3%に達し、リーグ平均の2倍以上という際立った数字を残している。この背景にあるのが、LB(ラインバッカー)ジャック・キャンベルの活躍だ。スピードとカバレッジ能力を兼ね備えた選手で、パスの可能性が高い場面でも無理にニッケルへ替えず、ベースのまま構える自信をディフェンスに与えている。

82.3% ライオンズ 1stダウン リーグ平均の 2倍以上
図: ライオンズの1stダウンでのベースパッケージ使用率は、2025年シーズン第17週終了時点で82.3%に達し、リーグ平均の2倍以上という水準にある。

実例2:グリーンベイ・パッカーズとミネソタ・バイキングスの動き

ライオンズほど極端ではないものの、マット・ラフルーHC(ヘッドコーチ)率いるグリーンベイ・パッカーズと、ケビン・オコネルHC(ヘッドコーチ)率いるミネソタ・バイキングスも、同様にベースパッケージ使用率でリーグ上位6チームに入る。NFC北地区の3チームがそろって同じ方向を向いているのは偶然ではなく、地区内で対戦を重ねる中で、重い編成への対応が共有されていった結果とも考えられる。

ベース回帰が抱えるリスク

ベースパッケージへの回帰は万能ではない。LB(ラインバッカー)は依然として、スピードのあるWR(ワイドレシーバー)やTE(タイトエンド)を1対1で追いかけるマンツーマンには不向きだ。エリアを守るゾーンカバレッジと組み合わせるか、ジャック・キャンベルのようなカバレッジ能力の高いLBを揃えられるかどうかで、ベース回帰の成否は分かれる。人材が伴わないままベースへ戻れば、かえってミスマッチを晒すことになりかねない。ベースへ戻さず、ニッケルの人数構成のまま大型セーフティを起用する「ビッグニッケル」でこの弱点に対応するチームもある。

今後の展望

オフェンスの重厚化とディフェンスのベース回帰は、今後も互いの弱点を突き合いながら進化を続けるはずだ。TEをさらに増やした編成や、隊形を偽装してベースかニッケルかを読ませない工夫など、オフェンス側の次の一手にも注目したい。ベースパッケージの比率がどちらに振れているかを追いかけることは、これからの観戦の新しい視点になる。

観戦のヒント: ベースかニッケルかは、ラインバッカーではなくDBを数えると早い。4人ならベース、5人以上ならニッケルかダイムだ。セーフティがボックスへ降りていれば、ランを厚く守るつもりだと分かる。
もっと詳しく

ディフェンスの編成の基礎や、代表的なフォーメーションの一覧は、以下の基礎知識・戦術まとめで解説している。